「日経アーキテクチュアらしい記事を」と読者の方に言われることがよくあります。それは記者への最上の期待であると同時に、最も達成が難しい目標の1つです。

 「日経アーキテクチュアらしい記事」とは多くの場合、「日経アーキテクチュアでしか読めないテーマの記事」を意味しています。そのことは各記者も、もちろん編集長である私も常に意識していますが、実際に「これは日経アーキテクチュアでしか読めないテーマだ」と胸を張れる記事は年に10本ないかもしれません。

 そうしたなか、今号の特集は、「日経アーキテクチュアでしか読めない」と自信を持って言えるテーマの記事です。特集タイトルは、「全棟建て替えの衝撃 もうマンションはつくれない?」です。

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 とっかかりとなったのは、杭工事データが改ざん、傾斜しているとされる分譲マンション「パークシティLaLa横浜」(横浜市)で、販売主である三井不動産レジデンシャルが住民に対し、全4棟の建て替えを提案。管理組合が2月27日に開いた総会で全棟建て替えを承認したことです(関連記事:杭偽装マンションで管理組合の全棟建て替え方針承認)。

 一般ユーザーだけを対象にした報道であれば、「よかった、よかった」で終わる話でしょう。しかし、建築関係の専門家に向けて情報を発信する日経アーキテクチュアとしては、今後の建設・不動産業界への影響を考える責務があります。部分的に記事を引用すると誤解を招く恐れがあるので、ここでは特集のリードを紹介します。

 「“杭騒動” に揺れた横浜市のマンション『パークシティLaLa横浜』で、販売主である三井不動産レジデンシャルが住民向けに提案した『全棟建て替え』が波紋を広げている。発見された不具合が建て替えまで要する瑕疵なのか不明なまま、全4棟を自社の負担で建て替え、慰謝料なども手厚く補償するという提案の内容は、これまで欠陥住宅訴訟やマンション建て替えで蓄積されてきた判例やルールを完全に逸脱するものだ。しかも、新築時の工事発注者である三井不動産は、建て替えにかかった費用を元請けの三井住友建設に求償すると明言した。マンション販売や施工のリスクは一気に拡大し、関係者の動揺は収まる気配がない」

 ほかのメディアでは読めない渾身の特集、ぜひこちらでご覧ください。

 ちなみに、この問題への賛否について本サイトで実施したアンケートの結果を公開しています。「施工不良マンションの『全棟建て替え提案』は妥当か?」をご覧ください。