適合義務化以降は、省エネ基準をクリアするだけでなく、さらに快適な室内環境を実現できる省エネ建築を目指したい。その際、設備に過度に依存することなく、建築的な工夫を盛り込むにはどうすればいいだろうか。
──小堀さんの設計したROKI Global Innovation Centerは、2011年度に国土交通省の「住宅・建築物省CO2先導事業」に採択されました。
はい。この建物は、社員の皆さんが心地よく健康的に働ける環境をつくりたいと、設計に取り組みました。その環境が省エネルギーであればなおいい、という発想が根底にあります。
──どのような理由からですか。
私は都市部だけでなく、さまざまな地方で設計を手掛けています。そういった経験から、土地のポテンシャルをどう生かすかは大きなテーマです。特に、各地域の気候条件はうまく取り入れたいといつも考えています。
ただ、今の建築の設備計画にそのまま落とし込もうとすると、少し違和感があります。設備は機械ありきですから、設備設計者は、どの国、どの地域でも成り立つような仕組みをどうしても考えがちになると思います。数値化できない気持ちよさも大事です。
──ROKIの社屋の場合は?
省エネ建築であるものの、自然光を利用したい、社員が好きな時に窓を開けて通風を得られるようにしたい、と考えました。社屋のある浜松市は温暖な気候なので、窓を開放できるようにする手法は可能だと思ったわけです。
──どのような工夫をすれば、窓を自由に開閉しても省エネになりますか。
空調が稼働したままで窓を開ければ、エネルギーの無駄になる。そこで、窓を開けると、自動的に空調が止まる仕組みにしました。
国交省の先導事業ですので、運用を開始してから3年間、省エネに関するデータを報告しました。そのデータによると、空調については35%ほどの省エネになっています。この仕組みは、一見エネルギーロスに映るようですが、実証できました。